MICEにも使える障害物競走 日本に上陸

 ホームパーティーでもアウトドアイベントでも、とにかくイベントを楽しむことが上手なアメリカで誕生した障害物競走「WARRIOR DASH」(ウォリアーダッシュ)。今やイタリア、デンマーク、スウェーデンなど世界10カ国で開催されており、いよいよこの6月、日本にやってくる。日本でのこけら落としは、6月15日のさがみ湖リゾートプレジャーフォレストでの開催だ。世界で300万人を超えるファンがいるとも言われる障害物競走は、別の開催地を求める追っかけがいるほどの熱狂的なファンを持つレースイベント。今後、日本各地での開催が予定されており、地域への誘客やMICEとしての可能性も期待できそうだ。

日本のスポーツに対する意識を変える可能性

デビット・スコット代表取締役
デビット・スコット代表取締役

 WARRIOR DASHは2009年7月にアメリカで初開催された障害物競走。5kmのコースには、垂直に立ちはだかる木製の壁、ロープ、タイヤ、火、泥など15種類の障害物が立ちはだかり、さながらTBSの人気番組、SASUKEを彷彿とさせる。会場は室内ではなく屋外で行われるため、解放感にあふれる。距離にするとわずか5kmだが、その解放感と仲間とのふれあい、何よりも大人になってからする機会がなくなってしまった障害物競走という非日常的なスポーツが人気の秘密のようだ。会場には音楽や飲食が楽しめるフェスティバルも同時開催され、応援に行った家族や仲間も選手を応援しながら楽しめる仕組みだ。
 このWARRIOR DASHを日本で展開するのは、WARRIOR DASH USAとライセンス契約を結んだスポーツバズアジア。他の国でもライセンス契約を結んだ会社が運営しており、ほぼ同様のルールで行われている。2012年にはアメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダで合計70イベントが開催され、レース参加者は104万人、フェスティバルのみの参加者は35万人を数えた。先行する他国では1開催あたり9,000~1万人を集客しており、日本でも人気スポーツになることが予想される。
 スポーツバズアジアのデビット・スコット代表取締役は、1997年にカナダ最北端のワードハント島から無補給徒歩で北極点に到達した冒険家で、日本在住15年。日本での開催にこう期待を寄せる。
「開催していくる国の多くでWARRIOR DASHは人気のスポーツになっている。仲間やそこで知り合った人と一緒になってはしゃいだり、助け合ったりして、人と人がコミュニケーションを図れるのが障害物競走の醍醐味。日本を変えるイベントになる可能性を秘めている」。
 国内での開催は、6月15-16日のさがみ湖リゾートプレジャーフォレスト(神奈川県相模原市)と、同月22-23日の苗場スキー場(新潟県湯沢町)、7月27-28日の東京ドイツ村(千葉県袖ケ浦市)がすでに決定しているほか、県が誘致に積極的な山梨県でも会場探しが進められている。基本的に同じ場所で土日の2日間連続開催する。スポーツバズアジアでは、年内に8カ所で合計16回開催し、7万~10万人の参加者と、フェスティバルのみの参加者を2万4,000人と見込む。2014年には32回、2015年には64回の開催を目指し、3年間で参加人数を39万~70万人と見込む。

エンターテインメントとエクササイズの真ん中

火のラインを飛び越えるヤキトリ
火のラインを飛び越えるヤキトリ

 WARRIOR DASHはスポーツなのか、エンターテインメントなのか。羽根石弥佳シニアマネージャーはこう説明する。
「対象の目安は週1回以上エクササイズをしている人。位置付けはエンターテインメントとエクササイズの真ん中というイメージ。シリアスにスポーツをしている人というより、イベント好き、新し物好きに適しているかもしれません」。
 参加資格は5km(皇居1周程度)を走れる、あるいは歩ける身体能力のある人で、15歳以上であればだれでも可。制限時間はなく、30分間隔で行われるウェーブスタートのどの時間帯にスタートしても構わない。さがみ湖の場合、競技時間は9時から16時までなので、16時までにゴールすればよい。スタート1回あたりの人数は100~500人になる見込みだ。
 日本での1イベントの集客数は3,000~5,000人を見込んでおり、初開催となるさがみ湖リゾートプレジャーフォレストではすでに3,000人のエントリーがあった(4月4日現在)。海外ではすでに知られたブランドであるため、外国からの来場者や、日本に住む外国人の参加者が多く、「2割強が外国人になる」と見込む。実現すれば、外国人と一緒に競技できる数少ない国内スポーツイベントになりそうだ。
 ただ、競技といってもタイムや順位を競うのはこのレースの本意ではない。選手は一応チップを付けて出走するため、自己記録や総合順位、エイジ別の順位はわかるが、大会を心から楽しんでほしいという側面と、競って人を押しのけたりするのは危険という考えから、順位を競わせる代わりに、最高傑作の衣装に贈るベストコスチューム賞や独創的で型破りな衣装に贈るコスチューム賞などを用意し、あくまでも楽しみを追求する。自己記録を追い求めるシリアスなスポーツ愛好家が多い日本では、新しいスポーツ文化として着目されそうだ。

観光振興やMICEの可能性を秘めたイベント

地域色を出すのが課題
地域色を出すのが課題

 WARRIOR DASHは基本的にどこで開催してもルールは同じ。障害物となる道具を持って各地でイベントを行うため、地形以外は同じ内容になることは避けられない。このため、1イベントあたり3,000~5,000人の集客力はあっても、参加者が各会場を回遊するような工夫が主催者側に求められる。例えば、「苗場スキー場に行ったら魚沼産のお米を活用した料理がいっぱいあった」とか、「地酒が豊富だった」など、各地で工夫を出す必要がありそうだ。
 スポーツバズアジアはあくまでも障害物競走の主催者であり、フードコートや地域らしさを出すイベントの演出までは手が回っておらず、「むしろ、地元の方たちにご提案いただきたい」とアイディアを募る。「地域に根づくイベントに育てるためにも、開催地の色を出していきたい」と羽根石氏は述べる。外国人の参加が多いだけに、クールジャパンやインバウンドを意識した提案も期待できそうで、同社は自治体、商工会議所、民間の垣根なくアイディアの申し出を期待する。また、開催地に関してもまだ相模原市、苗場町、袖ケ浦市しか具体的な会場が決まっていない。観光振興と地域の活性化のためにWARRIOR DASHを利用するのも手だろう。
 一方、MICEイベントしての要素も併せ持つ。大手企業は支店や支社同士を競わせてチームビルディングの育成を図ったり、研修に工夫を凝らすが、WARRIOR DASHにチームごとに出場し、コスチュームやチームとしてのフィニッシュタイムを競わせてチームビルディング力を養ったり、研修の一環として取り入れるのも一考だ。また、インセンティブ性を持たせて参加そのものにステータスを持たせることもオーガナイザー次第で可能になる。実際、「WARRIOR DASHの会場を企業の敷地の中に設定するのは難しいが、何時何分から何時何分のウェーブスタートを特定の団体の利用に指定することは可能」(羽根石氏)としており、旅行会社がMICE商品として営業・販売したり、オーガナイザーがインセンティブや研修イベントとして利用したり、スポーツ関連の企業が得意先を誘うのにも使えそうだ。

8,000円の価値観は体験してみないとわからない

8,000円は高いか、安いか
8,000円は高いか、安いか

 障害物競走元年となる今年。あのノリノリの声援で包まれるスポーツイベントが果たして日本に根付くのか。カギを握っているのは誘客プロモーションやイベント自体のおもしろさ、それにおもしろかったという口コミであることは間違いないが、地域の魅力の演出や同イベントの活用にも成否がかかっていると言えよう。
 エントリーフィーは8,000円。ウォリアー(戦士)が被る帽子、完走メダル、Tシャツ、ソフトドリンクかビールのワンドリンクが料金に含まれる。速いアスリートで約25分、日頃からふつうにエクササイズをしている人なら45分程度、遅い人でも1時間あればゴールできると言われている。6~7時間が制限時間のマラソンに比べると時間当たりの参加費は高いが、これを高いと感じるか、安いと感じるか。まずは行って参加してみないとその価値がわからないのが新たなスポーツの醍醐味だ。6月15日の開幕が待ち遠しい。

 なお、6月15日のさがみ湖会場のエントリーは10日前の6月5日までスポーツエントリーで募集している。マラソンなど人気のスポーツ大会は1時間余りで締め切られてしまう昨今、ぎりぎりまでエントリーできるのはアメリカらしくていい。週末の大人の運動会として、またビジネスへの活用の可能性を考えながらチャレンジしてみるのもいい。